変化の激しい現代社会で自分らしいキャリアを作るためのヒント 『キャリアショック』(高橋俊介)

読書

こんにちは! 秋富です。

今回は、『キャリアショックーどうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるか? 』(高橋俊介 著)という本についてご紹介します。

変化の激しい現代において、自分らしいキャリアを築くためのヒントが豊富な一冊ですので、興味がある方はぜひご覧ください。

概要

本書のキーワードは、タイトルにもなっている「キャリアショック」。

あまり耳馴染みがない人も多いかと思いますが、本書では次のように説明されています。

「キャリアショック」とは、自分が描いてきたキャリアの将来像が、予期しない環境変化や状況変化により、短期間のうちに崩壊してしまうこと

高橋俊介『キャリアショックーどうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるか?』東洋経済新報社、Kindle版、2014年、位置No.22

上記に続いて、変化の激しい時代を生きるビジネスパーソンなら誰でも直面する、「きわめて今日的なキャリアの危機的状況」だと書かれています。

本書では、このようなキャリアショックの時代において、自分らしいキャリアを構築していくための行動パターンと発想パターンが実例とともに紹介されています。また、明日からでもすぐに使える5つのアクションについても提言されています。

本書の初版の刊行は2000年。四半世紀近く経った現在、「キャリアショック」は私たちにとって、より現実的な問題となっていると感じます。

本書の内容を理解し実践していくことは、現代を生きる我々にとって非常に役に立つと思います。

本書のポイント

本書で伝えたいこと

本書が主に伝えたいことは、次の2点だと思います。

①これからの時代、個人のキャリア構築を会社に任せるのは難しくなった(それまでは、会社の敷いたキャリアのレールを歩めば良かった)。よって、個人個人が自律的にキャリアを構築していく必要がある。

②自分でキャリアを構築するといっても、変化の激しい時代には、長期的な計画を立てるのは現実的でない。また、特定のスキルや知識を身につけてもすぐに陳腐化してしまう。よって、これからは自分にとって「幸福なキャリア」を構築していくべき。

この中で、特にポイントとなる「幸福なキャリア」について、本書の説明を見ていきましょう。

「幸福なキャリア」を作るための条件

一体私たちは「幸福なキャリア」をどのように作っていくべきでしょうか。

本書では、そのための基本的条件として、「スキル」「コンピタンシー」「パーソナリティ」の3つの側面が書かれています。

(1)スキル

自分の将来のキャリアを作っていくと言っても、将来のことばかり考えて、自分に与えられた目の前の仕事をまともにできないのならば、それは本人にとっても会社にとっても不幸になります。

よって、現在従事している仕事をこなすために必要なスキルは最低限身につけておくべきだと書かれています。

また、スキルは何歳になっても身につけることが可能ですが、変化の激しい時代では次々と新しいスキルを会得していく必要があります。

このことについて本書では、「スキルは、蓄積するというより、生涯学習により、更新し続けるものだ」と書かれています。

(2)コンピタンシー

コンピタンシーとは、「ある職種において、長期的かつ安定的に成果を出せる人が持っている思考や行動特性」のこと。

キャリア構築において、仕事で成果を出すためにコンピタンシーを発揮していくことはとても重要ですが、スキルと異なり、コンピタンシーは一朝一夕では身につきません。

コンピタンシーの獲得の仕方について、次のように説明されています。

大切なのは最初のきっかけだ。実際にそうせざるを得ない場に追い込まれ、思い切って行動してみて、その場を自分で切り開いてみる。それがよい結果をもたらすと、意外に捨てたものではないと気づき、次も挑戦してみようと思うようになる。

高橋俊介『キャリアショックーどうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるか?』東洋経済新報社、Kindle版、2014年、位置No.578

つまり、積極的に経験を積んでいくことが大切だということだと思います。

仕事で半ば強制的にやらなければいけないことであっても、精一杯やってみることで自分にとっての良い経験となる。そのような挑戦を繰り返してようやくコンピタンシーが身についてきます。

このようにコンピタンシーの獲得には、時間と労力がかかります。

(3)パーソナリティ

本書では、キャリアの構築で最も重要なパーソナリティ(個人が持つ個性や性格)は、その人がどのようなことにモチベーションを感じるかという「動機」の部分だと書かれています。

もちろんスキルやコンピタンシーを身につけるのは、動機がなくても可能です。(例えば、どうしてもスキルやコンピタンシーを強化しなければいけない状況に置かれた場合など)

しかし、そうやって能力を上げて仕事で高いパフォーマンスを発揮できたとしても、その状況を幸せに思えるかどうかは、動機とのマッチング度合いによる、とのことです。

つまり、自分の動機と仕事がマッチングしていれば、ごく自然にスキルやコンピタンシーを会得、発揮することができ、さらに、自分でも幸福だと感じることができる、というわけです。

以上のことから、幸せなキャリアを築くためには、まずは自分の動機をしっかり把握することが重要です。

本書では動機を知るためのアセスメントツールや、それらを使わなくても動機を探る手法などが紹介されています。本書を読んで試してみてください。

ラブ・ユア・パーソナリティ

動機に関する説明で個人的に印象深かったのは、「ラブ・ユア・パーソナリティ」という考え方です。

自分の動機を掘り下げていくと、自分の嫌な部分、見たくない一面が浮かび上がってくることがあります。特に、会社で求められるコンピタンシーにマッチしないものが出てきた時に、より嫌な気持ちになります。

しかし、動機を個人の意思や努力で変えることはとても困難です。よって本書では「動機のいやな部分も含めて、自分はそういう人間なんだと受け入れるしかない」と言います。

自分の動機がどのようなものであろうと、すべてを自分のものとして受け入れる。その上でそのパーソナリティを矯正するのでなくできるだけ生かす形でキャリアやスキル、コンピタンシー強化を考える。まさに、「ラブ・ユア・パーソナリティー」が幸せなキャリアの第一歩であると私は考える。

高橋俊介『キャリアショックーどうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるか?』東洋経済新報社、Kindle版、2014年、位置No.749

私は、自分の嫌な部分や不足していると感じる部分について、それを見ないようにしたり、変えようとしてうまくいかずにヘコむことが多いので、「すべてを自分のものとして受け入れる」のは、とても大事な考え方だと思いました。

個人が取るべき5つのアクション

本書の後半では、幸福なキャリアを目指すために、我々が明日からでも実践すべき内容が、「5つのアクション」として提言されています。

(1)「自分の値段」ではなく「自分の動機」を知る

(2)動向を読み、賭けるべき流れを選ぶ

(3)自分のバリューとビジョンを掲げる

(4)価値あるWHATを構築するコンピタンシーの強化

(5)キャリアリスクを減らしキャリア機会を広げる

順番に見ていきましょう。

(1)「自分の値段」ではなく「自分の動機」を知る

「自分の値段」とは、社会からの評価のこと。転職する時などに「自分の市場価値はどれくらいか」と気になることがありますが、このような外部からの評価ではなく、自分にとって何が大切か(=「自分の価値軸」)を重要視することが必要だと書かれています。

自分の価値軸とは、先ほど説明した「自分の動機」のこと。

自分の動機を知ることで、自分が大切にしたいことが分かり、それに沿ったキャリアを歩んでいく。このことが、個人の幸せなキャリア構築の第一歩となります。

(2)動向を読み、賭けるべき流れを選ぶ

自分の動機を把握した後は、それとマッチするような仕事を選びます。

ここで大事になってくるのが、「世の中の動向を読み、賭けるべき流れを選ぶ」ということ。そうすることで、自分の差別性や希少性を高めることにつながります。

世の中の動向を知るためには、本を読むなどして知識を蓄えるのも大事ですが、それで終わりにするのではなく、知識や情報、肌感覚などを元に、「自分の頭で考えて動向を読み、そして、リスクを取って自分を賭けること」が重要だと書かれています。

知識を元に自分で考えて実際に行動してみる、ということが大事なのだと思います。

(3)自分のバリューとビジョンを掲げる

自分の動機を知り、キャリアを賭ける流れを決めると、通常はキャリアの実現に向けた長期的な計画を立てたくなります。しかし本書ではいきなりゴールを設定するのではなく、まずはバリューとビジョンを掲げることが重要だと書かれています。

ビジョンとは、自分のキャリアにおいて目指す姿。バリューはビジョンを実現していくために自分が大事にする行動規範や価値観のこと。

ビジョンもバリューも長期的で抽象度の高いものですが、一方で短期的で具体的な目標を立てることも必要だそうです。ただ、変化の激しい現代において、5年後、10年後の目標を立てることにあまり意味はなく、より短期的な目標設定が重要とのことです。

本書でおススメされているのは「100日プラン」。個人的にかなり実用的な手法だと思ったので、後段で詳しく説明します。

(4)価値あるWHATを構築するコンピタンシーの強化

WHATとは、「課題の発見・提起」のことで、WHAT→HOW→DO→CHECKという仕事のサイクルにおいて最も重要なパートだと書かれています。

つまり、会社や業界における課題や問題意識を自分で考えて発見していくこと。

WHATを構築するために必要なコンピタンシーを身につけていくことが、キャリア構築の上でも重要です。

(5)キャリアリスクを減らしキャリア機会を広げる

変化の激しい現在、キャリア構築において様々なリスクを取っていく場面が出てきますが、重要なのはリスクを機会(チャンス)に変えていくということ。

そのためには、精神的な柔軟性を高め、心の中の制約条件を取り除いていくことが重要です。

自分の価値観や目標を明らかにしたら、それ以外は制約を外して自分を縛り過ぎないことが大切だと書かれています。

これらのアクションを意識して過ごすことで、自分にとっての「幸福なキャリア」構築につながっていきます。

感想

私自身、自分の将来について悶々と悩むことが多いですし、実際に未経験職種への転職と北海道への移住という、大きな転機を経験したばかりということもあり、今後のキャリアを考えるうえで本書は大変参考になりました。

私は5年、10年先まで目標や行動計画を立てて安心するタイプなのですが、計画を立てるという行為や、計画したという結果自体に安心してしまい、その目標や計画が本当に実現できるのかという点は二の次にしている部分があるなと改めて思いました。

自分の価値観や大事にしたいことについては、振り返る機会がこれまでも多かったので、次はそれらをどのようにキャリア構築に活かすのかを考えていくのが大事だと思いました。

また本書で提唱されていた「100日プラン」について、具体的なやり方が次のように説明されています。

まず、100日を目処にアクションプランを立てる。新しいスキルをつけるために何かを始める、社内公募に応募してみる、仕事上で何かを仕掛けてみる……などなど、かなり具体的な行動だ。なぜ100日かといえば、いまの時代、100日間できっかけさえつかめないような目標は、永遠に実現しないと考えた方がいいからだ。(略)

100日経って、その間に何かきっかけがつかめたら、次にまた、100日を目処にアクションプランを立てる。こうして100日単位で目標を立てて、アクションをつなげていくわけだ。

高橋俊介『キャリアショックーどうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるか?』東洋経済新報社、Kindle版、2014年、位置No.1998-2002

私はこれまで自分の人生について長期的な計画(5年後、10年後)を立て、それを達成するために毎年の行動計画を立てていました。

しかし、計画を立てたことに満足して実現可能性をあまり考慮していないものも多く、実際、毎年計画を見直すことが多かったです。

本書の説明の、「100日間できっかけさえつかめないような目標は、永遠に実現しないと考えた方がいいからだ」という部分を読んでギクッとしました。

そこで先日から早速100日プランを実践しています。

すでに70日くらい経過しましたが、実際まだ何も着手していない項目があり、書かれていたとおりだと感じています。

キャリアの悩みは、人生の最後までずっと付き合っていく問題だと思いますので、複数の本を読んで自分が腹落ちできる考え方を見つけてみるのが大事だと思います。

まとめ

以上、『キャリアショックーどうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるか?』の内容と感想について書いてきました。

記事の冒頭にも書いた通り、変化の激しい現代において、自分らしいキャリアを築くためのヒントが豊富な一冊です。少し前の本ですが、たくさんの気づきがあると思います。

ご自身のキャリアに悩んでいる方は、一度読んでみることをおススメします。

このブログでは、キャリアや働き方に関する本の感想をどんどん記事にしていきたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

書誌情報

タイトル:キャリアショック どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるか?
著者:高橋俊介
出版社:ソフトバンククリエイティブ
発行日:2006年6月28日

この記事を書いた人
秋富 敬

農協の全国組織で十年ほど勤めた後、北海道の農業生産法人に転職。
日々、農業やそこで働く人々の人材育成等について考えています。
国家資格キャリアコンサルタント。
社会人のスキルアップのための勉強や、教養を得るための講座受講など、様々な形で学ぶことが好きです。
読書も好きで小説や民俗学、歴史の本をよく読みます。
農業や人材育成、読書のことなど、誰かの役に立つ情報を発信していきます。

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